幸せは君の隣に SSL 幼なじみ設定 斎千

「千鶴!遅刻するぞ! 乗っていけ!」
「あっ!待って、一君!」
朝の光が一段と輝くこの時間。
俺は幼なじみの千鶴を 後ろに乗せて自転車を走らせていた。
朝の風が心地よい。
出来ればもっとゆっくり 走らせたいものだが…。
自転車を一生懸命に走らせるのには訳があった。
千鶴が約束の時間に遅れたのだ。
遅れるなんてまずない。
むしろ、5分前には必ずいる千鶴が、だ。
「今日は、どうしたのだ?
お前が遅れることなんて なかなかないからな。
どこか具合でも悪いのか?」
何故かそれをいった途端に彼女の顔がほんのり紅くなった。
「ううん、お弁当を作ってたら遅くなっちゃって…。ごめんね…。」
少し瞳が潤んでいる。
そんな気にすることでもないのに。
知らないうちにまた顔が 強張ってしまったのだろうか。
また怖がらせてしまったのだろうか。
「あ、いや…。 大丈夫だ。
それより、少しとばすからしっかり掴まっていろ。」
と言って千鶴は無言で頷き、俺にぎゅっとしがみついた。
―千鶴はいいにおいがする。
花のような女性らしい清楚な香りがほのかに香った。
優しい香りだな、なんて思いながら俺は自転車を前よりも幾らか早くこぎだした。
「おっはよーさーん。 一君、千鶴ちゃん。
2人乗りとか恋人みたいだね。」
ケラケラ笑いながら
俺の自転車を追い越して行く紅い自転車。
ー総司だ。
「けっ決して恋人などでは…。」
総司の言葉を聞いて千鶴も自然と頬が紅くなっていった。
「まぁ、どうでもいいけどー。一君、あと二分で閉まるよ。」
あぁっ!と千鶴と俺は同時に小さく悲鳴をあげた。
「本当に仲いいよね、 き み た ち 。 」
そんなことを言われまた不覚にも顔が紅くなる。
「そっ総司!」
あははと笑いながら 奴は去っていった。
―ふぅ。間に合った。
校門の前では 土方先生が仁王立ちで待っていた。
「…おはようございます。」
「おう、斎藤、雪村。 ギリギリセーフだ。
後、30秒遅れてたら遅刻だった、な。」
「あっ、ありがとうございます…。」
千鶴と言葉が被った。
そんな小さな事だが 何故だか互いに顔が紅くなり、目をふせた。
「お前ら、っんと仲いいよな。」
今日で二回目の言葉だ。
苦笑い気味に笑う土方先生。
仲はいいつもりだが…
「それより、もう時間だ。早く行け。」
「はい。」
と校門から離れようと すると
「あっ、待て斎藤。」
「はい。」
千鶴と俺は振り返った。
何かしただろうか。
「…総司の奴を見なかったか?」
「さっき、見たよね? 一君。」
「あぁ。今さっき会ったばかりだ。 でそれがどうしたんですか?」
言うのを渋る様に 苦い顔をする土方先生。
また眉間に皺が増えてしまう。
「まだ、来てねぇんだよ…。」
「え、でも総司君、私達より先に行ったはず…。」
「はぁ〜い。 おはようございます。
僕の事が大好きな土方センセ。 寂しかったですか〜。」
土方先生はわなわな震えていた。
「総司―っ!」
朝恒例の怒鳴り声。
そして、総司と土方先生の戦いが始まる。
「そんなに怒鳴ると早死にしますよ。」
「うるせぇ!誰のせいで怒ってると思ってんだ!」
「可愛い僕のためでしょ。土方センセ。」
「…そんなことより、何で遅れたか言ってみろ。」
「コンビニに寄ってたからですよ。」
しれっと言う総司。
その態度がまた土方先生の心を逆撫でした。
「何してたんだよ!」
「お昼ご飯を買ってたんです。」
ほら、と言わんばかりに 持ってた袋を突き出す。
確かに。
袋の中にはマヨネーズ鮭弁当と書かれた弁当と、プリンが入っていた。
マヨネーズ鮭弁って何だ。
「これって、滅茶苦茶人気で一時間目前にいっつも売り切れちゃうんですよね〜。
後、このプリン。
今日から発売の新商品なんですよ。
限定50食って書いてありましたし、いります?土方先生。
僕の事が大好きな土方先生にならあげてもいいんだけどな〜。」
「いらねぇよ!」
「じゃあ、僕はこれで。」
手を顔の横にあて敬礼のポーズ。
というと総司は逃げた。
「待てぇ!総司!!」
若いなぁなんて思いながら、ただ走っていった土方先生の背中を見つめていた。
「一君。遅刻するよ? 行こう。」
千鶴がこちらを見て手を差し出す。
その手をとり、自然と顔が緩む。
「あぁ。行くか。」
一時間目は何だったかな
例え、他人になんと思われようが関係ない。
千鶴は俺にとって 今も昔も一番大切な 存在なんだから。
なんて思いながら
俺達は長い長い階段を足早に駆け上がった。

変な終わりかた―
誰か素敵な終わりかた教えてけろっ←
気が向いたら続き書きます。気が向いたら、ね
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